南城の平屋

設計
松山将勝/松山建築設計室
施工
ASJ 沖縄南スタジオ[米元建設工業株式会社]
撮影
石井紀久

Comment

南城の平屋は、沖縄県南部の長閑な集落群に位置する夫婦と子供3人の5人家族が暮らす住宅である。小さな旧家の老朽化と子供たちの成長に伴い手狭な住空間を改善したいとのことで、建て替えを決断された。

旧家での暮らしをのぞいてみると、たしかに個々の空間が確保できないほど窮屈なものではあったが、かつての田の字型住宅に見られる共生の暮らしが、そこには存在していた。

茶の間を中心に家族が密接に関わりを持ちながら、とても楽しく過ごされている日常の様子は、現代の暮らしが失ってきたものを問いかけるような豊かさに満ち溢れていた。住宅が再生することによって暮らしまでもが再構築されることがないよう、旧家での暮らしを保持していくことの重要性を肌で感じながら計画はスタートした。

敷地は150坪と住宅用地としては恵まれた面積であったことから、必然的に平屋が選択され、旧家での暮らしの継承と沖縄の厳しい気候風土への対応を同時に解決する平面構成を探りながら、最終的には中央に大きな空間(茶の間)を設け、両ウイングに直接アクセスできる個室や水廻りを配置する方向性に至った。

したがって平面構成は、家族が常に暮らしを共有していたかつての茶の間の状態を再考することと、沖縄の厳しい気候条件への対策として両ウイングの空間や深いデッキ空間が日射を抑制するバッファーゾーンとして機能し、さらには東西に繋がる開口部によって心地よい海風を取り込むなど、最適な環境をつくり出すことを意図している。

建て替えの動機となった個室を充実させるという最初の目的は、暮らしを見つめ直すたびに変化をたどり、夫婦の寝室は最小限に留まり、3人の子供たちも個室を持たず空間を共有することに至ったのは、家族が何よりも寄り添うような共生の暮らしを願ったからである。

南城の平屋では現在も旧家と変わらない家族の日常が豊かに育まれている。

(松山将勝)

More