大山のゲストハウス
森の隙間

設計
河口佳介+K2-DESIGN
施工
ASJ岡山中央スタジオ[株式会社イチエ建匠]
撮影
Nacasa&Partners Inc.  藤井 浩司

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鳥取県大山の麓に建つゲストハウスの計画である。近年造成開発された別荘地であるが、道の整備と、簡単な区画割りがされたことを除いて、敷地内には自然のままの森が残されている。間口20m奥行き70mの敷地には、松やミズキ、ヤマザクラなど種類様々な樹木が密生し、最奥からは大山を望むこともできる。

夏には下草や低木がうっそうと茂り、秋には落葉樹の落ち葉で埋め尽くされ、冬になると積雪1.5mを超えることもあると言う。こういった厳しい環境下で長期不在となるゲストハウスとなれば、接地型の建築は湿気、積雪、虫害等から考えて好ましくない。主要な生活空間は全て2階に設定し、それを各々のRC柱で支え持ち上げる計画が必然的に生まれた。1階部分に通風を確保して湿気が溜まることを防ぎ、持ち上げることで冬場の積雪からも建物を守ることができる。

この敷地に訪れた際、樹木を伐採し敷地に空間を作ることで建てられる建築は、これだけの自然が残る敷地に対しては余りに不釣合いであると感じた。これらの樹木を現存のまま残すことを目標として計画を進めることとした。実際に敷地内を歩くと、樹木がなく開かれた空間や樹木が密生している場所等、樹木の密度にむらがあり、松で囲まれた場所は縦への空間の広がりもある。

一度樹木の位置を測量によって割り出し、高さ・枝張等を確認し図面にプロットして、樹木のムラの中に空間を見つけ出して配置計画を行った。樹木で囲まれた空間の広さ・高さにより各空間の用途を決定し、それらを1本の渡り廊下で貫くようにして繋いでいる。通常の部屋の配置、形態から決定していく建築とは異なり、配置平面や断面の決定権を樹木側に委ね、元々の宿主である樹木の隙間を拝借し、森に間借りするような形態である。各棟により囲まれた部分は専用の庭のような空間となる。

秋の落葉・冬の積雪に考慮し各棟に勾配屋根を採用し、それらを各庭、もしくは樹木の枝ぶりに対して勾配方向を決定することで、方向性が複数存在するランダムな建物形態となった。樹木に対して身を委ねながらも、樹木と建築双方が引き立て合うことでより力強い建築へと昇華したと考えている。

(河口佳介)

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