安曇野の山荘

設計
粕谷淳司+粕谷奈緒子/カスヤアーキテクツオフィス
施工
ASJ松本中央スタジオ[松本土建株式会社]
撮影
吉村昌也

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都市の喧噪を離れた森の中で、樹木に寄り添うように計画されたセカンドハウスです。その枝分かれした独特の平面は、既存樹木を伐採せずに建設すること、そして室内からさまざまな方向の森への眺望を楽しむことを目的に導かれました。

垂直の壁がほとんどない、テントのような特異な断面も、限られたコストで最大の空間を生み出すというシンプルな目標のために導かれたものですが、同時に、インターネット環境が整えられた現代において、別荘に真に必要とされているものは(例えば書物などの)「物品」ではなく、豊かな自然環境を快適に享受できる広々とした「空間」そのものだ、という考えにも基づいています。

こうしてできあがった「小屋と洞窟の間」のような初源的な空間は、郊外住宅の簡素な縮小形でしかなかった、これまでの別荘建築に対する挑戦でもあります。

仕上げ材料には、現代の別荘建築に求められる性能を体現できるものを選定しています。例えば外部はメンテナンスが極力不要となるように、傾斜面から垂直面までをガルバリウム鋼板で一体に包みました。雨樋はなく、雨水や雪は周囲の地表に直接浸透させています。

シームレスで一体的な室内は、暖かみと静けさを同時に感じられる素材として、色土をわずかに混ぜた漆喰で仕上げました。傾斜が異なる壁の角度を調整する室内頂部の曲面仕上げにも、伝統的な漆喰は最も優れた材料でした。

幅広のオーク材で仕上げた床に埋め込まれた、LEDの照明器具や床暖房は、インターネット経由の遠隔操作が可能で、真冬に到着したオーナーを、明るく暖かな室内が迎えます。このように「安曇野の山荘」では、伝統的な素材と最先端の設備が、等しく用いられています。これらはいずれも周囲の自然環境と共存する建築のかたち、そして現代の別荘に求められるサステイナブルな性能から論理的に導かれ、採用されたものなのです。

(粕谷淳司+粕谷奈緒子)

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