中城の家

設計
森裕/森裕建築設計事務所
施工
ASJ沖縄北スタジオ[株式会社大興建設]
撮影
岡本公二(Techni Staff )

Comment

ここは沖縄中部の中城。中城城にいたる歴史の道は崖地に面し、石垣の先は眼下に太平洋が広がる。この住宅はその遊歩道に面し、海岸線まで1.5km、海抜128mの高台に立地する。見渡す限り広がる海の景色を満喫しようと、周辺の家々は3階建てが多い。しかし縦に積むだけでは空間内部における連続性が生まれにくい。高さがなくとも空間が風景と親密に結びつく方法を探すことにした。

まず、長細い三角形の敷地を最大限活かすため、海に向かう奥行き方向に連続する空間の場を設定した。4つの高さをもったスキップフロアを徐々に上がることで、地面から水平線へとベースラインのシーンが変化する。崖地における近景は突如として遠景に切り替わる。何の連続性もなく突如として飛び立つ浮遊感にも似た解放感をここでの楽しみとしている。寝室から立ち上がりLDKを覆う大きな架構がベランダから庭へかけても伸びて行き、全体をひと続きの空間としている。

吹き抜けは壁や天井を傾斜させ、歪んだ空間で距離感の認識は曖昧になり、大きく包まれた居心地を感じる。ここでは窓を絞って制御した強い陽射しが壁や天井に反射しながら空間を駆け巡り、万華鏡のように多様な表情を見せている。

浴室は海に突き出た筒状の箱に納め、空が見えるように箱を斜めにカットしている。2階の寝室とリビングとの距離感は近く、見下ろすことで庭や遊歩道までのシーンが連続する。ベッドの奥の壁にもたれかかると喧噪は消え、水平線だけがのぞく窓がある。海から最も離れたこの場所は、海を最も近くに感じられる場所でもある。外に出て眺めるあるがままの風景とは違い、建築の空間をともなって見える景色は趣が全く異なる。照準先の遠い景色も建築というスコープで狙うと距離は圧縮され近くに引き寄せられてくる。この海は誰のものでもない。しかし、ここで切り取られた情景だけは、いつまでもこの家のものである。水平線はいつも静かに揺らいで、その場所だけに穏やかさをもたらしている。

(森裕)

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