KS-house

設計
森裕/株式会社森裕建築設計事務所
施工
ASJ 旧・小倉スタジオ[株式会社松尾組]
撮影
岡本公二(Techni Staff )

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「空を引きこむ」

幹線道路沿いのガソリンスタンドの跡地に、商業用地と区分して住宅を建てる計画である。前面道路の先にJRが走り、その先が丘陵の緑地となっている。空との一体感を、暮らしの中で感じていけるかが空間を設定する際のテーマであった。外部に開くことだけでなく内部空間の透明性を上げていくことが空の風景を引き込むために必要であった。

施主の要望は空との一体感を感じる暮らしであった。設計にあたって単にガラスの向こう側に風景が広がっているということではなく、風景が近づき入り込んでくるような作用が起きる空間を模索した。外部と内部のつながりと内部空間自体のつながりを感じられる空間であれば、個々の生活の場からいつでも抜けた風景を手に入れられる。

まず、家全体を包み込む大きな架構をつくり、1階と2階の空間を吹き抜けによって繋げ、2階の天井には躯体とガラスのみ接触させ天井を浮かせた。天井を独立させることで内部の透明性が上がり、外部の光の変化を内部に反映させ観察することができる。

架構の形にも一つの特徴を与えた。床から斜めにせり上がっていく壁と傾斜した天井が一体となった大きな架構である。両端をつまんで外側へ、さらに上方へと引っ張られ、空間は歪み、空間は膨張していく。内部の距離感の認識に変化が起こり、視線をより外部へと導いていく。水平垂直で構成されたインテリアのスケールを超えて、ひとまわり大きく生活の場を包みこんでいる。階段を上がると次第に重力感が希薄になり浮遊感さえ感じはじめる。空の景色の分量が増えると同時に天井の抜けが広がり、浮遊しているその余白は空を引き寄せようとしている。

かくして1階と2階の様相は違い、昼と夜の表情は変わっていく。額縁の中の風景は揺らめき雲の陰が家の中を通り過ぎていく。見えている景色を壁や天井で構成された抽象的な空間がその揺らぎを同時的に映し出す。晴れた日に全身で日差しを受け止めていく外での感覚と違い、空は身近になり空間の一部となっていく。夜の帳が降りれば星が張り付き世界は動きを止める。昼の浮遊感は消え、灯りが生活の場へと舞台を移す。重力によって地面に吸い寄せられるように水平の視線は外庭へと注がれていく。一日の変化は刻々と訪れ器はいつもその時間を受け止めている。

(森裕)

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