AR-HOUSE

設計
窪田勝文/窪田建築アトリエ
施工
ASJ 大分中央スタジオ[執行建設株式会社]
撮影
鈴木研一

Comment

「木陰の下で生活するようなイメージ」

日本の地方都市の宅地は、なにがしかの看板や、電柱・電線、キッチュなテクスチャーの家など、常にマイナスイメージで語られる何かと隣り合わせです。これらとの共存が当たり前の現在、設計者を含む私たちはもはや何がおかしいのかさえ見失う位に感覚がマヒしてしまっていると思います。まったく気にせずにオープンな住宅をつくるか、うるさいものとしてすべて内向きに閉じてしまうか――極端な例のほうが、設計者には簡単でしょう。

しかし、中には上手く引き出してやれば圧倒的な魅力になる、という要素もあるのです。その敷地にどれほどの潜在的/顕在的な魅力があるのか、そこで何が可能なのかを見極めるのも、設計者の大事な仕事のひとつでしょう。私にとって設計するということは、敷地が元来もっている良好な「遺伝子」を見いだして整理する作業です。敷地のもつ可能性をうまく利用して生かすことができればよいと、常々考えています。

大分市には、高度経済成長期に、別府湾岸に横たわる巨大な製鉄所ができました。ちょうどそのころの昭和40年代に大分市内で住宅団地の開発がいくつか行われ、その中のひとつの団地にこの住宅の敷地があります。標高80mほどで、大分市の中心部を一望できます。団地のはずれという立地と開発後の時間の経過から、周辺には非常に落ち着いた穏やかな空気が流れています。そして敷地内には、削りっぱなしのまま放置されたかのような、地山のゆるやかな斜面がありました。

ここの大きな特徴である、北向きの高台、敷地内のゆるい斜面、このふたつの魅力を生かした住宅はどうしたら可能なのか、生活するうえでこのふたつの魅力が身近に感じられるようにするにはどうしたらいいのか。そこで採用したのが、ふたつの直交する白いフレームです。

ひとつは高さを生かすもの。最上階は、さえぎるもののない開放感と浮遊感、木陰のような安心感を同時につくり出します。門型フレームが、見下ろす景色をありのままに緊張感をもって切り取ります。

ふたつ目はゆるい斜面となじみのよい低めのもので、個室は土地の勾配を身近に感じられるように、かつプライバシーを保てるように並べます。最下階は打放しコンクリートの壁面で四周を閉じる――といったように各層で生活の色分けをしています。この3層をつなぐ階段には、光の先に空が見えるようにしてオープンな最上階に「引き寄せられる」感覚を付加しています。建物トータルで「閉じきらない」建築を体感できるようになっています。

(窪田勝文)

More